よいどれ舟

私の心の所在を探していた。最初の小説を読み始めたきっかけはそのようなものだったかもしれない。見つけると安堵して頭の中で呟いた。宝物のように抱きしめながら。けど、一体、それがなんだというのか。宙に浮いたまま、安堵の快楽を求めて、波に揺られた、舟に乗ることもせず、見送った、私の魂を。貴方は言う。君は一体何処にいる?正直に素直になりなさい。消えることに慣れてしまった私は言う。私自身とは貴方が決めることで、私が決めることではない。すると貴方は笑う。左様ですか。旅にでも出たらどうですか、と。見送った舟は海の真ん中で今でも誰にも見られないまま漂っているのだろう。